「第一回 海洋セミナー柏島」の結果を報告します(98.8.25)

 去る8月22日(土)には、皆様お忙しい中、「第一回 海洋セミナー柏島」に多数お越し下さり本当にありがとうございました。第一回目のセミナーとあって準備不足の点が多々ございまして、皆様にご迷惑をおかけいたしましたこと、お詫び申し上げます。
 当初の予定では、50人も来ていただければ大成功と思っており、アンケート用紙および講演要旨を50部しか用意しておりませんでした。参加者名簿は紙が余ることを承知で約100名分準備いたしましたが、名簿にお名前を書いていただいた方だけでも110名、ざっと数えただけでも約130-150名は来られていました。内、島の方は名簿にあるだけで46名もご来場下さいました。主催者としてこれほどうれしいことはございません。本当にありがとうございました。また、本セミナーは大月、宿毛、中村だけでなく、高知や他府県からも多数の方々が参加されました(外国人の 方も1名来られていました)。
 黒潮実感センター設立準備委員会では、今後も海にまつわる楽しい セミナーを開催していこうと考えておりますので、一人でも多くの方が来られますよう、ご協力をお願いいたします。なお、第2回の開催に ついては後日、掲示板および、放送でお知らせいたします。

 当日は東京大学助教授の佐野光彦先生をお招きし、前半「造礁サンゴと魚類のかかわり」と題して講演を行っていただきました。そして後半は私、神田が黒潮実感センター構想について話をさせていただきました。
 当日来られなかった方に、佐野先生の講演内容をかいつまんで紹介させていただきます(若干の補足説明を入れさせていただきました)。

講演:「造礁サンゴと魚類のかかわり」

 1970年代前半に沖縄地方で起こったオニヒトデの大発生により、造礁サンゴ(後の浜にあるようなサンゴのことです)は大部分が死滅した。サンゴ礁にはいろいろな種類の魚類やエビ・カニ・ヒトデ類が住んでいる。これらの生き物がサンゴが死滅することによってどのようにいなくなっていくのか?また、サンゴの復活に伴って魚たちはどのような反応を示すのかといったことを、沖縄県の西表島で1984年から 現在に至るまで、魚の種類数と生息数を調査した。
 サンゴの死滅状態を(1)枝状の構造が残っている状態と、(2)がれきとなってしまった状態に分けて調査したところ、サンゴが生存している状態の時に比べて(1)では種類数で65%、 個体数で30%に(2)では種類数で30%、個体数で10%にまで減少した。これはサンゴの枝の複雑な立体構造を隠れ家や餌場として利用している魚が、その立体構造の崩壊に伴って、著しく減少するためであった。
 一度壊滅したサンゴ礁はその後次の3つのタイプに変遷する。ひとつは、がれきのままの荒れ果てた状態が続く。二つ目はがれきの上に海藻が生える。3つめは新しいサンゴの幼生ががれきにくっついて、再び新しいサンゴが生えてくる。
 調査の結果から、サンゴの生存は魚の生存に大きな影響を及ぼしていることがわかった。また、サンゴ礁は大小多くの魚たちの住みかであるだけでなく、幼魚の保育場としても重要である。サンゴ礁は魚の餌場としての重要性だけでなく隠れ家を提供する意味でも、天然の漁礁といっても過言ではない。サンゴを保護する事は、漁業対象魚も含めて、そこに住む 多種多様な魚を保護する事にもつながる。

 セミナーの翌日、佐野先生を後の浜へお連れし水中を案内しました。佐野先生からは以下のような感想を頂きました。

「まず海がすごくきれいなのに驚きました。そして思っていた以上にサンゴが発達していたことと、それ以上に魚の多さに驚きました。 魚も熱帯性の魚と温帯性の魚が共存しており、種類や個体数では沖縄のサンゴ礁よりも多いのではないかと感じました。ダイバーについては、 潜ったとき多くのダイバーとすれ違いましたが、ガイドダイバーの指導がよく、特にダイバーに関して何もいうことはないと思います。しかし、 せっかくブイがあるのだから船のアンカーリングはサンゴのためにも、極力避けた方がいいのではと思いました。今度はゆっくり時間をとって柏島に遊びに来たいと思います。」

 今回のように、次回以降もセミナーで柏島にお越しになった先生方に、柏島の海中を紹介しようと思っています。そして一人でも多くの方々に、柏島の海の素晴らしさを実感して頂こうと思っています。高知県が全国に誇れる柏島を広く紹介することで、島の知名度を上げ、そして多くの人が観光に訪れることで、柏島地区及び大月町の地域活性化に少しでも貢献できたらと思います。
 皆様方のご支援、ご協力を今後とも宜しくお願いいたします。

黒潮実感センター設立準備委員会            神田 優