第5回 海洋セミナー大月の報告

 7月17日、柏島公民館で「第5回海洋セミナー大月」を開催しました。
 日本学術振興会特別研究員の奥田氏を講師に招き、「海の中の懲りない面々ー口の中で卵を守るテンジクダイ類(ハリメ・ゲンナイ)の社会ー」と題し、大月町の海岸のどこにでもいる「ハリメ」の、興味深い生態に関する講演を行っていただきました。
 この講演には地元の方だけでなく、町外のダイバーも多数参加してくださいました。

 講演終了後、地元で漁業を営むおばあさんから意見が出ました。
「ダイバーというのは柏島にとっては利益にならない、却って迷惑な存在です。実際にアオリイカやその他の魚の漁獲量が減ったのは、ダイバーが海を荒らすからです。陸上においてもゴミを捨てたり、駐車ルールが守られなかったりで、地元の住民が大変迷惑しています」との意見でした。そして私(神田)に向かって「これ以上柏島を有名にしないでほしい。これ以上ダイバーに柏島に来てもらいたくない」とおっしゃいました。
 ごく普通に漁業を営んでおられる方が、ここまで発言せざるをえない、ということで、 私は柏島における漁業者とダイバーの間の溝を感じずにはおれませんでした。

 私の返答は以下の通りです。
「漁獲量が減ったこととダイバーの存在の間に相関関係があるかどうかはわからないけれども、釣りをしている人の下で潜ったりして、漁業行為を妨害するダイバーが少なからずいることもわかりました。
 しかし今後、平成14年には柏島にトンネルが開通して、大型観光バスが乗り入れ、ダイバーを含む多くの観光客が柏島に押し寄せることは目に見えています。
 ですから早急に漁業者とダイビングを中心としたレジャーとの、競合を避ける意味でのルール作りを行わなければならないと私は考えています。現在私は『柏島島おこしの会』を通じて、漁業者・ダイビングサービスの双方に話し合いのテーブルについてもらうべく、努力しているところです。
 個人的には、元来柏島は漁業の島であると考えています。そこにダイビングサービスが進出してきて一大産業になりつつあるのが現状です。ダイビングサービスと漁業者が対等な立場での意見の交換が行えるのが理想ですが、まず後進であるダイビングの側が一歩譲った形での、海でのルール作りを行う必要があると思います。そしてよりよい関係を築いていく中で、ダイバーにとってのルール緩和(ポイントの開放など)を願っていくのが順当だろうと思います。
 昨今のダイバーは潜って魚介類を取るようなことはしません。ゴミも捨てたりせず、むしろ海底に捨てられたゴミを拾って帰ります。実際にダイビングが主要産業である沖縄県の座間味島などは、ビーチや村の中にゴミもなく、美しい環境が保たれています。ほとんどのダイバーは海に潜ることで海の美しさを認識し、海を保全しようと考え行動しています。このあたりはご理解いただければと思います」

 私がこのように述べたことで完全に納得していただけたかどうかはわかりませんが、おばあさんからは更なる意見はありませんでした。
 しかしセミナーの5回目にして、ようやく地元の方の本音の意見を聞くことができたこと、ようやくそこまでこぎつけられたことを大変うれしく思います。
 またセミナーの内容について「海の生きものの話もいいけれど、『漁業とダイビングの共存のありかた』についてのセミナーも開催してほしい」との意見もいただきました。