土佐あちこち
(「高知新聞」6月21日掲載)

「里山」という言葉はたびたび耳にしていたが、「里海」は初めてだった。先日、大月町柏島で開かれたシンポジウムのテーマだ。
 さんご礁はもちろん、一千種以上もの海洋生物がいるという柏島周辺の海は、想像以上に注目を集めていると言っていいだろう。例えば、シンポには在阪テレビ局も訪れ、熱心に取材していた。五月の連休中にはニュース枠で特集も組まれたそうだ。「沖縄の海よりもきれい」と言う水中スタッフの話には重みがあった。
 シンポの翌日に行われた柏島体験ツアーでは、雨にもかかわらず水深十五メートルまで見ることができた。海の透明度も人を引きつける魅力であることを、ここに来て初めて実感した。
 シンポで討論された「自然博物館」構想はいたってシンプルな考え方だ。島全体を丸ごと博物館としてとらえ、自然環境も人も集落もありのまま見てもらうものである。消費型観光地を目指すのではなく、環境保全が第一の考えは、四国西南部の環境行政にとって不可欠な要素となるだろう。
 ただ柏島が試練を迎える日は近い。十四年度末をめどに工事が進められている県道柏島─二ツ石線の平山トンネルが開通すれば、ダイバーや釣り客が急増するのは必至。訪問客が増えても「里海」の理念を貫けるかどうかは、住民の課題である。(宿毛支局・西森征司)