黒潮実感センター設立準備委員会 漁業と観光の共存推進
(朝日新聞 奈良・京都、高知版:8月6日掲載)


黒潮実感センター設立準備委員会が主催する行事で、海へ潜り、水中生物などの
観察をする子供たち=高知県大月町柏島で


 四国西南端にある高知県大月町の柏島は、人口約五百七十人の小さな漁村だ。この島を丸ごと自然博物館にしようという壮大な計画が進められている。島民を主役に、漁業と観光の共存、環境保全を目指し、二〇〇二年度の開設を目指している。
 島は、若者の漁業離れで過疎化が進み、カツオやアジなどの沿岸漁業で栄えたかつての面影はない。だが周囲の海には、黒潮の影響で熱帯産と温帯産の約千種類の魚が泳ぐ。全国で屈指のサンゴ礁もあり、スキューバダイビングやいそ釣りに訪れる観光客は年間約三万人にのぼる。
 高知県は自然に恵まれながら、自然史系の博物館がほとんどない。柏島の海の美しさを生かす施設として「黒潮実感センター」を設立し、自然史系博物館として運用できないか。一昨年七月、高知大などの研究者や島民ら二十七人で検討会を開き、発足したのが設立準備委員会だ。
 事務局は、今年度限りで閉校になる町立柏島中学校の一室に設けられ、東大大学院農学系研究科で水産学を専攻した神田優さん(三三)が事務局長として常駐している。神田さんは「博物館といっても箱物ではなく、島全体をフィールド・ミュージアムとしてとらえ、ダイビングやいそ遊びなど自然の素材を生かした体験型の博物館にしたい」という。柏島中学校の教室は、博物館の研究施設や環境教育などの拠点として使う計画だ。
 これまでに、水中生物の映像ライブラリーを製作し、柏島の海の生き物の写真ギャラリーを設けるとともに、海の環境学習会などを四十回程度開いてきた。六月には橋本大二郎知事らを招いて「柏島シンポジウム」を開き、自然博物館が果たす役割について話し合った。豊かな自然を求め関東、関西方面から修学旅行生が訪れるようになり、島民にも「おらが町の博館」意識が浸透し始めたという。

黒潮実感センター設立準備委員会
 柏島全体を自然博物館にするという構想のもとに発足した。高知県の補助や企業の助成を受けるが、センターの建設資金は乏しい。「黒潮実感センター設立友の会」を発足させ、会員を募集中。年会費は個人が一口二千円、団体が二万円。会員には会報などでイベント案内や島周辺の海の状況を知らせている。
問い合わせは同準備委員会(0880・62・8022)へ。