三宅島での環境教育 噴火で中断
代替地に柏島視察
きょう米人学者 両島の交流期待
 (読売新聞 高知版:13年3月5日掲載)

講演で体験学習の再開に意欲を見せたモイヤー氏
(追手前高芸術ホールで)

 伊豆諸島・三宅島で、海を通じた環境教育を実践してきた海洋生物学者、ジャック・モイヤー氏(71)が五日、大月町柏島を訪れる。火山噴火で中断しているサマースクールの代替地として視察するのが目的で、モイヤー氏を招待した柏島の住民は「これを機会に島同士の交流が深まってほしい」と期待を寄せている。

 アメリカ・カンザス州出身のモイヤー氏は、東大でサンゴに関する博士号を取得。一九五二年、アメリカ空軍が三宅島周辺で行っていた爆撃訓練の中止をトルーマン大統領側近に書簡で訴え、実現したことをきっかけに島民との交流が始まり、島に移住した。

 現在はスキンダイビングや生物観察を通じて、自然の素晴らしさを理解してもらうサマースクールなどを実施。小学五年生から高校二年生までを対象に、四泊五日で行う夏休みのサマースクールには一昨年、全国から百人が参加した。


 しかし三宅島では昨年七月の火山噴火で、活動が中断。全島民避難から半年が経過した現在も再開のめどは立っていない。

 一方でこれまでのスクール参加生から「今年はぜひ実現して欲しい」という声が多く寄せられ、モイヤー氏らスタッフは別の候補地を探していた。

 柏島を自然の“博物館”にしようと活動している「黒潮実感センター」設立委員会事務局長、神田優さん(34)がモイヤー氏に講演を依頼。柏島でサマースクールができるかどうかの視察を兼ねて、島の訪問が実現した。

 モイヤー氏は四日には、高知市の追手前高芸術ホールで体験学習の大切さをテーマに講演し「今年は必ずどこかで(サマースクールを)やります」と強調。代替地としてほかに沖縄や八丈島があがっているが、「柏島は三宅島と同じくらい豊かな自然がある場所なのでとても楽しみ」と話し、神田さんも「これを機会に、高知と三宅島の子供たちがお互いの自然を通じた交流を」と話していた。

 モイヤー氏は五日、柏島を見学した後、午後七時三十分から、すくも湾漁協柏島支所で海洋セミナーの講師として講演する。