心に残った環境学習
柏島中で最後の卒業式と閉校式 島民ら100人出席し祝う

(2001年3月19日 朝日新聞高知版掲載記事)

   今月で閉校になる大月町柏島の柏島中学校(生徒十五人)で十八日、最後の卒業式があった。かつては沿岸漁業や養殖漁業で栄え、今は全国有数のサンゴ礁を目当てに年間約三万人が訪れるこの島だが、押し寄せる少子・過疎化の波には勝てず、生徒数はピーク時(一九六〇年代)の十分の一になっていた。同校は三年前から「人と自然の共生」を目指して環境学習に力を入れてきており、最後の卒業生四人の三年間は、島にやって来た社会人講師とともに歩んだ日々だった。

 午後二時から、体育館であった最後の卒業式は閉校式も兼ねていた。かつての卒業生や島の人たち約百人も出席、四人(阿部愛さん、伊藤真帆さん、梶原亜紀さん、坂本由美さん)の卒業を祝った。田中農三校長は「柏中が心のふるさととして永久に語られ、地域の心の中で生き続けることを願います」とあいさつ。卒業証書を受け取った坂本さんは「母校がなくなるのは寂しいが、感謝の気持ちを忘れず頑張っていきます」と答辞を述べ、母校の五十四年の歴史に別れを告げた。在校生十一人は四月から、町中心部の中学校にバスで通う。

 来賓の中には、卒業生に三年間、社会人講師として海の素晴らしさを教え続けた魚類生態の研究者、神田優さん(三四)の姿もあった。

 神田さんは、島の豊かな自然を生かし、学術研究、環境保全、地域おこしにつなげようと三年前、高知市から移り住んだ。「黒潮実感センター設立準備委員会」をつくって事務所を校舎の一室に構え、生徒たちを海に連れ出しては、魚やサンゴの生態などを教えてきた。

 四月からは、生徒のいなくなった校舎を拠点に、センターの立ち上げに向けて研究を本格化させる予定だ。「自然を考える素晴らしい教材が柏島にあることを全国に発信し、地球規模の環境保全につなげたい」と神田さんは意気込む。

 式の会場には、生徒たちが作った大きな三枚の海のパネルが飾られた。描かれたいろんな魚や「ずっといっしょ この海と」などの言葉には、生徒自身の「卒業記念」とともに、学校に残る神田さんへの熱い思いが込められている。

 「環境学習が何よりも心に残った」「母校がなくなるのは寂しいけど、島には神田先生がいる」。パネルの前で、卒業生がかけてくれた言葉に、神田さんの目頭は熱くなった。



4人の卒業生



学校長式辞



生徒から保護者に花束贈呈



送辞



卒業生と田中先生



答辞



柏島中学校閉校式



閉校記念集合写真



閉校式餅投げ