土佐あちこち/三位一体
(2001年4月25日 高知新聞掲載記事)

 書店で本を探していると、スキューバダイビングの雑誌が目に飛び込んできた。表紙は広末涼子。体験ダイビングをしたらしい。中をめくると、日本全国の潜水ポイントを紹介していた。四国では柏島が大きく取り上げられていた。
 連休になれば、もうダイビングの季節である。大月町柏島に海洋生物研究機関の設立を目指す「黒潮実感センター設立委員会」がこのほど、アオリイカの産卵礁設置作業に取り組んだ。作業には地元ダイビング業者で組織する事業組合と、地元漁業者が参加した。この共同作業の意味は大きいと思う。両者はこれまで「漁場を荒らされる」という点で溝があった。このためダイビング業者は、潜水届の提出などのルールづくりを行い、加えて地元振興にも寄与しようと、昨年末に事業組合を結成。今回が初めての試みだった。実感センターの学術的研究、漁業者の海洋資源確保、ダイビング業者の地域貢献。この三位一体の取り組みこそ、豊かな海を守ることにつながるのではないか。産卵礁は実感センターやダイバーが定期的観察を続け、結果を地元に報告する予定。設置したままではなく、研究結果を加えることで少しでも経済効果をもたらせたら、ダイビングと漁業の共存も見えてくる。(宿毛支局・西森征司)