漁民とダイバーの島 高知県西南端の柏島
(平成13年5月19日 朝日新聞大阪版夕刊掲載)


・産卵床の設置作業をするダイバーたち(後方の船)に背を向け、「あんまり興味はないね」と貝を採る島民

・樹脂製の人工海藻を植えるダイバー

 高知県の西南端、周囲約4キロの柏島(大月町)を丸ごと自然博物館にしようという「黒潮実感センター」構想が正念場を迎えている。高知大学非常勤講師の神田優さん(34)らが、観光と島の生活の共存を目指し、教育・研究の拠点にしようと設立委員会を立ち上げて3年。一部のダイバーのマナーの悪さが原因で、島民から構想に対して反感の声が強まってしまった。
 この対立を乗り越えようと神田さんらが考えたのが、アオリイカの人工産卵床の設置。海藻が育たなくなる「いそ焼け」を防ぎ、ダイバー、漁業者双方の利益になるようにと、大月スクーバダイビング事業組合(福留輝政組合長)と一部地元漁業者らが共同で、島周辺の2カ所の海底に産卵用の人工海藻などを植えた。


・産卵床として沈められたウバメガシの枝に産み付けられたアオリイカの卵

 すでに設置ずみの人工産卵床では実際に産卵が始まっていた。
 この計画を支援している大月町では、順調に産卵するようになれば、島のお年寄りの漁業対策にもなると期待を寄せている。
 しかし島では「ダイバーが来る前は、もっとたくさんいたんだよ」と疑問視する声や「わしらの海をいじられるのは、あんまり面白くないね」と語るお年寄りも多い。両者の溝が埋まるまでには、まだ時間がかかりそうだ。