〜柏島舞台に海から地域考える〜
(2001年10月19日 朝日新聞掲載記事)

 高知大で全14回リレー講義 「土佐の海の環境学」始まる
1年生中心に170人が受講 来年1月、シンポ予定


 県の西南端にある大月町柏島を舞台にしたリレー講義「土佐の海の環境学」が、高知大(高知市曙町3丁目)で開催されている。同大の全学生を対象とした共通教育科目で、1年生を中心に約170人が受講している。来年1月まで全14回の講義を高知大の教員など7人が担当し、1月26日には橋本大二郎知事や柴岡邦男・大月町長らをパネリストに、一般聴講もできるシンポジウムも開かれる予定だ。教員らは「講義を聴くだけでなく実際に柏島を訪れて、自分の頭で環境と人間の関係を考えてほしい」と話している。

 人口約600人の柏島には日本有数のサンゴ群生地が広がり、多様な海中生物が生息している。高齢化と過疎化が進むが、豊かな自然にひかれて1日で500人前後の観光客が訪れることもあり、ゴミの増加や地域住民とのトラブルなどの問題も起きている。
 これらの問題を解決しながら柏島の自然の持続的な利用方法を探るため、昨年秋から高知大を中心とした研究者らが環境を守る条例案づくりや魚やサンゴの生態調査などの共同研究に取り組んできた。

 講義は共同研究の成果をもとに、高知大の教員ら7人が法律、経済、生物など様々な視点から提言する。講師の1人で、柏島を丸ごと自然博物館にしようという構想を進める「黒潮実感センター」事務局の高知大非常勤講師神田優さんは、柏島の自然環境などをスライドやビデオを使って講義している。「県外出身者が多い高知大の学生に、高知の海の素晴らしさを知ってもらいたい。実際に柏島を訪れ、その魅力だけでなく問題にも目を向けて解決策を考えてほしい」と話す。

 受講した教育学部1年の中島薫さん(19)は「春野町出身だが、高知の自然のことをよく知らないので受講した。高知の海にサンゴがあることを知らなかった」と驚いていた。理学部1年の松原智春さん(20)は「将来、自然にかかわる仕事をしたいので受講した。海のない群馬県の出身なのでぜひ柏島を見てみたい」と話していた。


豊かな海に囲まれた柏島=大月町柏島で、本社ヘリから