高知新聞コラム「話題」に取り上げられました
(平成14年3月20日 高知新聞コラム「話題」掲載)


 大月町の柏島で海洋生物の研究拠点「黒潮実感センター」設立に向け活動している高知大講師、神田優さんが先日、大阪で講演した。神田さんらの目指す環境保全型地域おこしは、多くの聴衆の興味を引いた。
「柏島の素晴らしさが分かった。ぜひ行ってみたい。できれば住みたいくらい。でも今後、移住希望者が増えれば、住宅建設で開発が必要となるかと思うが、環境保全との両立はどうなるでしょうか」。講演後、ある女子大生からはこんな質問も出た。
 的外れと笑ってはいけない。彼女は「こんな場所なら行きたい。住んでみたい」と純粋に思い、そして心配したのだ。
 神田さんは「島は過疎に悩んでいる。もし、そういう事態になればたくさんある空き家で対応できるのでは……。島は国立公園区域なので、開発に法的な歯止めはかかっている」と丁寧に答えていたが。
 都会の目線と田舎の目線はこんなに違う。女子大生の質問は「過疎と高齢化」という本県の「常識」を認識していないゆえなのだろう。
 県内にいると、この二つの言葉がいやというほど刷り込まれていく。われわれも記事の中で多用するし、公人のあいさつでも決まり文句だ。
 その分、われわれは「過疎で」「高齢化で」と、自縄自縛に陥ってはいないだろうか。UターンやIターンで地域に入る人の実践は、外にいるからこその発想。地域の中にいては生まれないこともままある。
 過疎と高齢化の予備知識がない目線を知り、そういう人に過疎と高齢化の実情を理解してもらう一方、彼らからも学ぶ。その中から、この厄介な持病とうまく付き合う知恵を生みたい。 (細川喜弘)