素敵な本をご紹介します。

実感センターサイトの「海の環境学習会」報告に目のないかたに、おすすめしたい本 です。著者は柏島小学校の浦木秀雄先生。作文指導を中心にしたある年の実践のまと めで、20編以上の子どもの作文が引いてあります。柏島小の子どもたちが海で、家 で、学校でと日常のいろんな場面を書きました。その書きっぷり、大人はまずかなわ ないでしょう。読む私たちも30センチほど目線が下がって、間近に友達や親の顔を 見ている柏島の子どもになれます。

作文教育は、単に文章が上手になるためのものではありません。子どもたちが何を大 事に思い、いかに心を動かされ考えるかということと深くかかわっています。浦木先 生は子どもたちに、海で遊ぼう、友達と遊ぼう、働く親を見つめようとよびかけ、体 験を書かせ、それをみんなで読んでほめることを続けます。家族にも読んでもらい、 いっしょに子どもの作文から学びます。

「島の子は島の生活を大事に」と先生が言い続ける必要が、あの柏島にもあります。 遊びは都会の子と変わらず、目は外を向いている。私も何人ものかたから聞いてきた ことでした。でも紹介されている作文は、柏島の子からしか生まれないであろうもの ばかり。彼らの力、生活環境が迫ってきますし、ディレクター(教師)の力量には脱 帽します。たとえば修学旅行を「おみやげ」をテーマに書かせることで、家族とのつ ながりがあらわれてくるあたり、先生ってすごい仕事、と思ってしまいます。出てき た作文、見ものですよ。

本に登場する6人とは彼らが中1のとき会いました。この表情や口ぶり、まんまやな いかーとにやにやしたり、「あの子が」とびっくりしたり。味のある幡多の言葉も満 載です。
浦木先生には一度だけお会いしています。子どもたちのスナップ写真をお借りしたい などといって突然学校へ押しかけたのですが、困った顔も見せず「今、手元にこれし か」と写真を出して下さいました。同級生のお父さんの船で沖ノ島へ釣りに行ったと き(やはり学習の一環)のもので、それはもういい顔で写ってました。ふだん時間を 共有している人の間ではこんな顔してるんだなーと見とれたその写真と、この本の印 象はよく似ています。
先生は大月町内のご出身だそうですが、子どもたちといる場所こそふるさとと思って いらっしゃるのでは。声高にではなく挿みこまれる問題意識に、ふるさと・柏島への 思いを感じます。地元を愛するロコボーイ、ロコガールはかっこいい。柏島の子はそ うなっていくのではないでしょうか。

 佐々木道子(黒潮ボランティア・里海)



「島の子と生きる」著者:浦木秀夫 A5版144ページ 定価:1,000円(税別)

発行:(株)南の風社
   〒780-8040 高知市神田東赤坂2607-72
   TEL:088-834-1488 FAX:088-834-5783
   E-mail:minaminokaze@muj.biglobe.ne.jp
   URL:http://www5a.biglobe.ne.jp/~minamino